Photo and words
「晴れの日ガチャ」
朝陽が落ちて
晴れの日ガチャ
青空ガチャ
ベランダガチャ
洗濯物ガチャ
マンションガチャ
戸建てガチャ
車ガチャ
電柱ガチャ
散歩犬スキップガチャ
街ガチャガチャ
コロナガチャ
ランドセルスキップガチャ…いないね
昨日の夜
地球の箱に 100円入れたら
晴れの日ガチャ 出て来た
「愛がいるところ」
おぼえています
きみと であった日
黒いカラスが 道をわたりながら
僕を 呼んだのです
ぼくは カラスのあとを付いていって
きみに出会ったのです
それなのに ぼくは
(カラスは どこにいくのかな)と
わざと よそ見したのです
それなのに きみは
「こんにちは」と 言ったのです
カラスは 言ったのです
こんな身なりでも 天のお使いです
あなたの心に
「愛」をしつらえました
あなたは
「愛がいるところ」
になりました
きみの為に生きる 僕になれるかな
きみと暮らす家を 持てるかな
家族に なれるかな
何人家族に なれるかな
そんなことを思いながら
僕は きみを 迎えに行ったのです
「かげり野」
かげり野に 星ぐるまの音
闇の魔女が 空のスイッチ切りに来る
かげり野の 時間は何時?
夕ごはん 間にあうように
木々の さざなみ立ちました
空の月
子供のなまえ 貼りだした
みんなが 一目散に
家へ家へ 駆けて行く
絵 shu imamura
「つたえたいこと」
あなたが 10センチくらい せがのびるころ
おかあさんは 3さいくらい としをとります
あなたが サンタクロースに てがみをかくころ
おかあさんは サンタクロースの だいしんゆうです
あなたが きせつが まちどおしくなるころ
おかあさんは つぎのきせつの じゅんびをしています
あなたが プレゼントを くれるようになるころ
おかあさんは バリバリはたらいて おかねをかせぎます
あなたが おけしょうを するようになるころ
おかあさんは あなたにすてきなようふくを かいにいきます
あなたが おりょうりが じょうずになるころ
おかあさんは あなたのあかちゃんを だいています
あなたが しずけさを すきになるころ
おかあさんは ウォーキングを かかさずしています
あなたが おとしだまを くれるころ
おかあさんは おばあさんに なっています
あなたとおかあさんは どんなときも
しあわせをあたためて まえにすすんでいます
「雨」
覚えているかな このときの
あなたと私に 落ちた雨は
頬がゆるんだ 雨だったね
こぶしをにぎった 雨だったね
涙をさらう 雨だったね
聞いて くれないかな
夕闇にまぎれて
流星になって
どこに 行ったのか
ペットボトル1本の
このときの 雨は
どこに 売っているのかな
「小夏」
雨が 空を くだる
どうどうと 夏が来ない
夏の汗は 皮膚の下に ひっそり息づいて
買い物に出る 私のうなじで
くすくす 笑いたくて しかたがない
雨に掘られた 水たまりを目の前に
つながれっぱなしの 雑種犬は
軒のない 三角屋根の小屋で 鼻をうずめている
雨の夜
もう 待ちくたびれた
誰かが 打ち上げ花火を 上げました
少しの夏から 沢山の夏に なるので
暑さのお見舞い 申し上げます
「いのりがいるところ」
日々は いのり
景色は いのり
住まいは いのり
寝床は いのり
食卓は いのり
衣服は いのり
身体は いのり
自分は いのり
言葉は いのり
人は いのり
全ては いのり
いのりには みかえりがない
全ては いのり
いのりがいるところ
「レストランの夏空」
父は どんな日も オムライスが好きだった
父は どんな日も 平たい財布から お金を払った
「夏休みになったら また連れてきてね」
僕は言った
父と僕は どんな日も オムライスが好きだった
僕の肩がどんなに広くなって
父の背中がどんなに丸まっても
平たい財布を テーブルに置いた
「夏になったら また来たいな」
僕は言った
父と僕は どんな年も
レストランの夏空を 話して暮らした
「森」
森は 走れなかった
私のバスが 走り去って行くのに
森は 駆けつづけていた
私の 胸の中で
森は 居た
飼っていた犬のように 首をかしげて
写真の中で 私を待っていた