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Photo and words

「君のゆくえ」

いつの日も知っていたよ
「犬の鳴き声」と 夜中に言い出す君の 
心の扉 少し開いたら
亡くした犬の 抜け毛を溜めていたんだ

いつの日も見ていたよ
「雨」 と夜中に言い出す君が 
心の扉 はいだすと
君の全身が 雨だったんだ

いつの日も信じられたよ
道に転がる 羽音一枚.
大事に拾う 君は
友達に 恵まれるんだ




「友達」

あなたの 友達になりたい
いつか 浜辺を歩いたゴム草履に
砂のひとつふたつ 付いてきた
砂粒 くらいでいい

砂浜に落ちていたような
小さな貝がらの
印象くらいでいい

日向に干された
あなたのブラウスを
少しだけ揺らす 1グラムの風でいい

洗濯ものを かすった
たんぽぽの 一本の羽毛でいい

夕陽の海岸を散歩する
あなたの犬の影に
なれたらいい

部屋の テンポドロップの
しずくビンに暮らす
お天気の結晶の
ひともようでいい

真夜中に
夢の中を歩いているときは
あなたの夢に
良い景色を描く
夢の中のクレヨンに
なれたらいい

あなたの世界の
一番小さな景色に
私は なりたい





「風になりたい」

故郷の空気を
いつでも運んでいく

野原も雪山も湖も越えて
届けにいく

君の肩を 触っているよ 
君の背中を 押しているよ
君の周りを 飛んでいるよ
そう 伝えたい

身体をゆるめて 力をぬいて
歩んで行ける

君の 日々の 風になりたい




「秋のはじまり」

身を乗り出して 蟻の群集が歩いている
来年も ここに 産まれようね

山のカラスが 空に沸いて飛ぶ
10年経っても ここに来ようね

大勢の 金木犀が
空気の皿に どっさり乗って
真夜中の 4階の私のベランダに
毎晩 来てくれる

私は 毎年 裸足で 
ベランダに 取りに行く




「ミシン」

ミシンは 永遠の階段を 上がる音

タンタン タカタン タカタカ タタタン

学校の弁当袋を 縫ったら
子供の頬が
ロールパンみたいに 咲いた

ロールパンではない 神である
ミシンも 神である




「バラ色のあご」

私たちの花びらを
好きなだけ 食べてください

茂らせてください
私たちのあなたが 生まれて来た事を
私たちに 祝わせてください

あなたの影は 
バラの姿で 地面に伸びています

ため息が バラの香りなのです
今夜 鏡に 顔を映して よくご覧ください

バラの花びらの形の
美しい バラ色のあご

歩けば バラの風ぐるま回る
あなたなのです




「こびと」

ねむりの なかに
こびとが きます

きょうのひの おそうじを
していってくれます

こびとは
なんのあとものこさず さっていきます
はなすことも あうことも できません

こびとは
ほしいものなど ありません

きみに あしたがくるので
こころの かたづけを しにくる
だけなのです

こんやも あしたも あさっても
まいばん かならず くるのです




「小さな君」

君は 涙をこらえる事が出来るように なりました
泣きたさを食いしばるように なりました

小さな力を育ててあげようと 思いました
小さな思いを守ってあげようと 思いました

まだまだ 涙笑いをするけれど
パンパンと 服をたたき
強さも弱さも 振り払えば

ほら 「自由」がへばりつくでしょう