Photo and words
「もったいないよ」
いつかきっと この人生に
立派な勲章が沸いて出るに違いないと
ビルの大型ビジョンを見つめても 沸いてこないよ
今日こそ 必ず
今日こそ 絶対に
素晴らしい文句が ひらめいて
世界一の文豪が宿り
ノーベル賞の予感がしても
宿らないよ
「もったいないよ、家に帰って ご飯にしなよ」
「ぼんぼねこ」
ぼんぼは かわいい
口あいて にゃ~ん
ぼんぼは おこりんぼ
耳立てて びゃ~お!
ぼんぼは やさしい
首ふって にょ~る
ぼんぼは うれしい
しっぽふって ロ~ン
ぼんぼは どこいった
ボンボ~ン! ボンボボ~ン!
「門番の犬」
わたしは 工場の門番でした
針金のレールを行ったり来たり
一人で 夜をこいで
毎朝 主人に褒められるのが
一番の喜びでした
年老いて 門番の仕事を
終える日が来ました
私はもう
役に立たない犬
一晩で 自分が入る穴を掘り
もぐりました
翌朝 「寒かっただろう」
主人は 私を引っぱって行くと
作業場の 片隅に
毛布と水が 置かれていました
「元気のもと」
朝は ろくろこねる主人の手が
「随分飲んだね」と 私の水桶すすいでくれる
昼は 青空の 光の手が
主人の薪割りに 手拍子を打って
薪を運ぶ主人が 「あったかいね」と
声をかけてくれる
午後 お湯のポットを 作業場に運ぶと
陶器をながめに 客が来た
主人は また 習字をふるった
半紙を持つ客が ぞろぞろ外に出てきた
墨の手が 「元気のもと」
と いつも私の頭を撫でる
「光と闇」
光は 奇跡の顔をしている
闇は 孤独の顔をしている
光は 孤独を知らない
闇は 奇跡を知らない
光だって あなたがいなければ 孤独なんだ
闇だって あなたがいれば 奇跡なんだ
だから あなたは ひとりになってはいけないんだ
「光の町」
すねに落ちた 光のめだか
地べたころがる 光のわたあめ
コチョコチョくすぐる 光のえんぴつ
キラキラながれる 光の小川
光のぼって どこにいる
父と母と妹は どこにいる
私もいつしか 光の芽を出し
光を吐くのだろう
光の町が 大好きだよ
光の町で また いこえる
「母が泣いた」
僕が言った
家族の事なんて
一番興味がない
家族の事なんて
ひとつも知りたくない
母が泣いた
ごめんね
力を入れて生きていたんだよね
ごめんね
ひとりぽっちだと気付かなくて
自分の事ばかり と言って
ごめんね