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「大人」
いきなり 大きな事に 打ちのめされる訳じゃない
ある朝 ジャムのビンが 開かないの
学校に行くとき 小雨にあうの

いきなり 大きな夢に 出会う訳じゃない
シロツメ草で かんむりを編むの
クリスマスの枕元に ノートと鉛筆があるの

いきなり 恋人に 出会う訳じゃない
麦わら帽子 黄色い傘 可愛い靴
月の庭 雪の窓 毛布の手
真っ白な朝もやの おかあさんの台所に会うの

いきなり 大人に なれるわけじゃない
晴れの日 雨の日 色んな日
ご飯を食べて 笑って 泣いて 
差し伸べられる 両親の手の上で
寝て起きて なるの




「雪の町」

この町は
この雪が 選んだ町

町に 雪を撒いている

楽しい人に 手を叩きながら撒く

悲しい人に 靴が鳴るように撒く

寂しい人に 雪を大粒にする

辛い人に 笑顔の粒で笑って見せる

この町は
この雪が 選んだ町

雪が 息ついて 
傘ぐるま まわす町





「幸せ係り」
春は 桜の花びらのように お喋りをしよう
夏は 芝のテーブルに ご飯を広げよう
秋は 郵便箱に 雨と もみじを貼ろう
冬は 星達の とんがり靴を ベランダで数えよう

ランドセルの隙間に 入る涙を 全て呼び出そうね
笑顔で 心を丈夫に 育てようね

あなたが 旅立つ日まで
私は 幸せ係り




「せかいの じく」
せかいのじくは このいぬにある

ペットショップの ねこにある
サバンナの ぞうにある
なんきょくのペンギンにある そらとぶひこうきにある
パンにある まどのひかりにある
がっこうじゅうの えんぴつにある

せかいのじくは いっぱいあるね
みわたしきれないね さわりきれないね

せかいには せかいのじくしか ないんだよ

せかいのすべて
ゆきのなかの このいぬの
へいわと あいと いのちのこと

photo shu imamura
Shu and Naomi’s dog named Taro




「真夏のバス」
真夏のバスに乗って
出掛けてみようよ

なんにもできない毎日で
いいんだよ
思いつめた心のままで
いいんだよ
自分をひろげなくて
いいんだよ
誰にも会えないままで
いいんだよ
自分にもぐったままで
いいんだよ
涙のままで いいんだよ
そのままで いいんだよ

真夏のバスに乗って
出掛けてみようよ




「天ホタル」

雨雲を ドンと蹴飛ばした 花火

チカチカチカチカ
火花が かがやき出す

チラチラチラチラ
火花が ホタルのように 降って来る

サラサラサラサラ
天の川の せせらぎの 音がする

花火が 天のホタルを 
連れて来てくれた




「夏終い」

やっと 見てもらえた
世界に二つと無い 素晴らしい姿だ
写真を撮って もらえた

「今夜は いい夢が 見られそうですね」
夏の陽が 初めて 声をかけてくれた

「台風が 噴水池に来て
ストローを挿して 水遊びをしたそうですよ」

そろそろ終わりなのですか

「そろそろ夏終いですよ」




「選ぶ」
選ばれるのも私 
選ばれないのも私
選べるのも私 
選べないのも私
選ぶのは私
選ばないのは私

ねえ おかあさん
私は選ばれる? 私は選ばれない? 
私は生きられる? 私は生きられない?

選ばれるよ
生きられるよ
ずっと あなたを あきらめない
ずっと あなたを みはなさない
目には見えない あなたの精霊が
あなたのそばに あなたと一緒に 
まいにち 生きているのだからね




「いぬのきみの そばにいたいよ」
いぬの きみと はなしたいよ
1にちのなかで なにがすき なんじがすき?
さんぽは どこがすき おうちのまわりがすき 
やまがすき かわがすき くるまのさんぽがすき?
かけあしは すき?
つちと くさと いたと コンクリートと
すなはまと かわと きょうしつのゆかと どれがすき?

かぜがすき? ゆきがすき? おてんきは なにがすき?
たべものは なにが すき?
にんげんは おおきいのがすき? ちいさいのがすき?
ひとりがすき ふたりがすき さんにんがすき?
だれがすき?
だいどころのママがすき ベッドにねているパパがすき?
マロンのおかあさんがすき びょういんのせんせいがすき?
おくすりは すき? ちゅうしゃは すき?
きちは ある かくしものは ある ひみつは ある?

いぬの きみの そばにいたいよ

どんなにおいが すき? なにいろが すき?
たいようのひかりが すき? おへやのでんきが すき?
おたんじょうびの ろうそくのひかりが すき?
おふろは すき? しゃんぷーは すき?
どこでねるのが すき?タオルでねるのが すき?
ママとパパのベッドのしたが すき?
ベッドのうえの まんなかが すき?
となりに ねていい? かたに くびのせていい?
くびに てをまわしていい? 
おなかの け さわっていい?
てを つなぎたいよ

きみの すがたは
みどりいろの はらっぱを つれてくるんだ
ゆきのひに そらとぶとりを つれてくるんだ
あめのひに ママとかさを つれてくるんだ 
ひでりのひに パパとアイスクリームを つれてくるんだ

きみに あうだけで がまんしていたなみだ うかびあがるんだ
きみが いきているから ぼくが いきているんだ
しあわせなことは なに? こわいものは ある?
ほおを よせたいよ

いぬの きみに ぼくのいえに きてもらいたいよ
いぬのきみの そばにいたいよ

 絵 shu imamura
shu web site タロー行進曲




「あじさい犬」

あじさいと 咲いた犬
咲いたばかりで 目やにがある

そんなにたくさん あったら
こんど 眠ったら 目が開かないよ

顔をふいて あげたいけれど
きみが あじさいの匂いになるのが先

身体を洗って あげたいけれど
雨より先に 洗ってはだめだよ

夜になれば 月が 散歩する
その空が 大好きだから 
眠らないことに しているんだよ




「耳にしたこと」

オリーブの木の丘に
足の悪い婦人が暮らす
年に一度のお祭りは
オオカミのお皿に 真っ白いメレンゲの山
坂の家々を 子供らが周る

オリーブの木は 年に3度 色が変わる
子供が出来たら 自力で部屋を建て増しする
ガレージに 洗濯機とアイロン台を置く
犬は テラスに1つ椅子を持っている


出会いは エスプレッソで乾杯する
次は 家の調度品を見せる
次は 音楽を振舞う
その次は お菓子をどうぞ
本をどうぞ 花をどうぞ 
ドレスをどうぞ
エンゲージリングを捧げる




「バターミルク」
月の光を バターナイフで 空にひろげる
やさしい色 いいにおい
お星さまが さやさや さわぐ

光は バターに なりました 
空は ミルク なりました

お星さまは バターミルクに くるまれて
星の ゆりかごたまごが わんさかゆれる

朝になると バターミルクの あさつゆが
ママのフライパンに ふってきた
粉をいれて パンケーキ

この指とまれ とまったよ
ひとりぼっちの 犬も猫も いっしょにたべようね





「愛を暮らしている」
誰かと 話しをするときも
傘を差して とぼとぼ歩くときも

わいた涙を 道に落とすときも
友達と なにげなく手をつなぐときも

急ぐ夜道で 星空に目をやるときも

生きるときは
愛をくらしている