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「わたしが いた」



けさ かんかくが かんじられた
わたしは わいている
かんかくが かえってきたんだ








あきらめも ひなたにだされて
うみのくじらを しとめたように
うつむいて ほほえんでいる










ぶつだんと ほんだなと かびんをふいた
ぬれティッシュが ちゅうを まっている
ああ かんじょうが かえってきたんだ




「はつはるの おめでとう」



とくべつな おめでとうの日が きました
全世界に ゆきわたる 「おめでとう」を
おおきなこえで 言わなくては なりません








全世界に くばられる 「おめでとう」を
78おく7せんまい 書かなくては なりません
文字が声になって 飛んで行くように 書くのです








全世界の 皆の命を つつみこむ
あたたかな 毛布のような 文字でなくてはなりません
私は そういうふうに 生きなくてはなりません






2022年 はつはる

 




「クリスマスのやくそく」


きみが うまれたとしの クリスマスに
きみの サンタさんが うまれたんだよ


サンタさんの たんじょうびは 
きみの クリスマスなんだよ




サンタさんの たんじょうびは
せかいじゅうの こどものかずだけ あるんだよ


サンタさんの たんじょうびは
せかいじゅうの こどもたちの クリスマスなんだよ




きみが いきているかぎり サンタさんのたんじょうびがあるんだよ

きみが いきおわるとき きみのサンタさんも いきおわる




きみは いのちのあるかぎり クリスマスをやるんだよ


いのちのあるかぎり どこでなにをしていても なにがあっても

「クリスマスには おめでとうをいうこと」




「誰しもが守られる世界」

命がいくつ 集まったら
「永遠の命」になれますか
あなたが美し過ぎて
命を 差し出したい者が 大勢います







オランダガラスの詰めもので 日本に来た シロツメ草が
日本の どの草より 紅葉した
日本の 秋に 一番尊重された
今度は 何人の肌で温めたら 人間になれますか










もう 赤い血を 流さなくていいのです
何者にも ならなくていいのです
ゆっくりしていい がんばらなくていい
命が残ったままでも 明日 天に帰ってもいいのです





「しげる」

空にしげる 月雲に
私は 心臓をつかまれて 動けない

空にしげる その月雲に
野良犬は 一息ついて 餌と憩う








保護猫たちが 一息つこうねと
サービスエリアで 車から降ろされた

生きられるの 死んじゃうの
鳴き声が しげりあるく







光のろうそくさんは 
今日はロシアン帽

誰かが 虹を手もみして
粉のように 振るう朝
幸福の体温が 身体にしげる
  









「美しく生きるもの」

花瓶に生けた あじさいが
しおれそうに していたので
天井に 吊るしたら
美しく生きるものになった




葬儀の てぬぐいを
半分に切って 洗濯して
ラップの塩むすびに ぱらっとかけたら
美しく生きるものになった




誕生日に貰った 冷感敷パッドを
表にして 裏にして 何年も
くたびれるまで 使ったら
美しく生きるものになった



「切り取って 注目して」

不安や涙ばかりの 毎日に
息にもならない位ちっぽけでも
いいことが あったなら
切り取って 注目して




仕事を していないけれど
世界との 調和のために
病気を 引き受けたことを
切り取って 注目して





お金が無くて
200円使うときも いつも悩んでしまっても
頭が使えるから 世の中の裏方でもいいことを
切り取って 注目して




「今の君」

それは
上から見るとペシャンコにつぶれている
巨大な隕石が降って来たみたいに

それは
横から見ると 前より盛り上がっている
ホットケーキがパツンパツンと膨らむように

それはね
「揺さぶり」という前触れ
次の事が 確実に起きる 
時間も 何も 言えませんが




「私は地上に結ばれている」

私が 減っている
縮んでいる
萎えている
うすらうすら消えている

皆は 息をするたびふくよかに微笑む
私は 窓向こうの
雨が乗る 葉っぱをながめながら
風呂マットに乗っている

大丈夫 
私は 地上に結ばれている
波立つ日々は 安らぎから来た
動かない日々は 幸せを守っている




「里帰り」
さよならの手紙は 何色がいいか
いつもわからない
一生わからなくて いいと思う

振り向いて手をあげ 
「また来るね」と角を曲がる
「駅まで送ろうか」 母が何度も言った
「大丈夫だよ」

瞳の中の母が 
ダイヤモンドの原石を ざく切りにしたような
涙を 流しながら
安い一眼レフで 僕を撮った