「りんごのくりぬき」

「りんごのくりぬき」
りんごの芯を
ナイフをさして くり抜いた
そのりんごを 空にかざしたら
てんとう虫が1匹 穴から 降って来た
そのりんごを 目のかわりにして歩いていくと
大鍋で 牛乳をわかす おばあさんがいた
そのりんごを 指にさして 歩いたら
歓楽街で ホームレスに みつめられた
そのりんごの 穴の向こうに
雷ごうの光をあつめる ギラギラの町があった
そのりんごを 縦にしたら
その穴から咲きたいという 花がやってきた
そのりんごを 横に転がしたら
大勢の猫が代わる代わる 穴に前足を入れに来た
りんごは なぜくり抜かれたのか わからない
りんごは 自分のゆくえを 心配した
そのりんごに 一足先に 夏をあげた
布で編んだ ぞうりを 履かせてあげた
そのりんごは 写真に撮られて
巨大なボウルの 水に浮かび ゆらゆら眠った