「今日もさようなら」

「今日もさようなら」

私はもう7年ここに居る
水槽に貼り付いた唇を
ちょこっと開けて
流れて来る餌を吸い込む

お祭りの赤飯が
浮かぼうと
赤飯粒が流れて来なければ
それがいい

変わりない日々がいい
友達も来なくていい
生まれた場所も
わからないのだから
誰かに 何かに
会いたいと思わないほうがいい

約束をした事がある
けれども その日になったら
自分の姿形を
誰一人 持ち運べるわけがないと
振り出しにもどり
水槽に貼りついた唇が
小さい泡を ひと粒出して
今日もさようなら と言ってくれる

水槽を 泡の水にして
掃除する人間が
私の唇を はがそうとして
私が この世の力を
全部つかう日がある




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