「都会にいた心臓」
ハトが歩く地面は
雲のよう
雨の空気が舞っている
パイプ椅子は
ビルのよう
組体操の練習をしている
キッチンカーの
ガスボンベの中は
どんな音がするのだろう
誰かが寄こした
無音の耳の中を
息子のかかとと
私は 歩いている
あちらこちらの
ロッカーが 口を開け
私の荷物を 呑み込んでくれる
「もうすぐだから」
湿った背中 湿った靴
赤い電気の扉 引かれた椅子
その
都会の裏に
いつのまにか
私達が外した
心臓があった
都会と故郷を
超えて 作られた
ささやかな力で
打ち続けている
「いつでも いつまでも ここにいるよ」