「花見」

私は 言葉が下手でも
しかたない
振り向いて
娘が 居なくても
しかたない

野球場の こかげを
車の屋根に乗せて
持ち帰りましょう と
ホームの人達と 万歳した

肩に頬を のせて
うとうと 眠ったら
昔 死んだ犬が あの家に居て
金色の餌の鍋を 齧っていたの
皆で けらけら笑ったよ

太陽も 花も かじかんで
娘が 買ってよこした
薄手のジャケットを
介護士さんが 着せてくれた
何色か わからない
海老色じゃ ないかなあ
私は 海老が 大好きだから

今日も 誰かのメガネを
かけている みたいなの
だって こめかみが
きつくて たまらない

おかあさん 何やってるの
振り向いても
娘は いないの




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