「さよなら桜」
飛び上がって
すべり出す
旅に開いて
見えなくなる
もう見えない
はかなくて
声も出ない
目を閉じて
別れをかみしめる
スズメの巣のために
南から来るツバメのために
ポツポツトントン ノックする
6月の雨が そこに来たせいで
私は十本の指で
桜を掴んで
空に放ち
さよならする
そうして
桜をかざったら
密かな森の風のような
耳鳴りがした
その密かな音は
何日も続いている
夜の耳を 傾けると
規則正しく
毎日 聞こえる
桜がいなくなったら
桜の森が
私の耳に出来ている
予感がする