「母の月」

母がもう居ないその年の
冬の空の まあるい月灯りを
母の真似をして
上がらない腕の 指先をのばし
透かして 見ていた

言葉を持たない 月灯りは
指先をすべり降り 床に立つと
闇を手にしたように
影遊びをして
すきま風より 笑った

感情を持たない 月灯りは
私の「悲しみ」を 嬉しそうに
「貰う」と 言ってくれた

月灯りは
雪の地面の 一番下にもぐり
命の長い 氷の結晶になって
冬の終わりまで そこに留まって
私の悲しみを 抱いた

私を 特別扱いしてくれた

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