ペットボトルの貸し出しコーヒー

私の家に来る人は、何かしら手土産を持って来る。
ペクにしても、酒屋の叔母にしても、父方の従姉妹にしても、母方の従姉妹にしても、
最近では、キュウリだの、じゃがいも、トマトだの玉ねぎだの、農家の卵に、ケーキ、マックだの、お料理だの、スポーツドリンクだの。

いつもアイスコーヒーをコーヒーメーカーで、コポコポと淹れて、
それを冷ましてから、2本のガラスポットに入れて、
冷蔵庫に仕舞う。

夏場は、アイスコーヒーを皆に出してあげる。

一年を通して、コーヒーを渡す機会が一番多いのは、
酒屋の叔母で、夏冬兼用のポットを用意している。

叔母の家のポットを持って来て貰ったり、
私の家のポットで渡したり、
2リットルの麦茶用のポットに入れる時もある。
それは、カサとして半分以下になるが、
運ぶ時に、こぽれにくいから良いと思い、
最近では、いつもそれを使っていた。


それが、この頃、お客が多いので、
皆に貸し出していて、
叔母の家の分のポットが無くなってしまったのである。

ときどき立ち寄る叔母に渡してあげたいのに、どうしようと考えていて、
3リットルの空のペットボトルが2本、あった事を思い出した。
どうして、そんな大きな空のペットボトルがあるのかというと、
断水の時がたまにあるので、使ったりするし、
叔母が、お墓参りに行くときに、
その3リットルのペットボトルに、
家の美味しい水を入れていくのである。
それで、私に、ペットボトルを取って置くようにと言うので、
ほぼ捨てられる事がない、ペットボトルがあるのだ。




そして、「そうだ!そうしよう!」と
その事を、頭の中に器用に思い付いたのである。



先ず私はそれを、この目で見て来たのだ。

先日、叔母の家に行った時に、
私があげたポットのアイスコーヒーを、
500ミリのペットボトルに移し替えていたので、
思いも寄らない光景に、びっくりしてしまった。

それをリビングに持って来て、
牛乳とコーヒーで割って、
大人ばかり4人がこぞって、飲んでいるのである。

「えーーっ、
あのたっぷり入っているコーヒーを、
500ミリのペットボトルに移し替えて、
フタをラップとゴムで留めて、
入れてるーー!!」


写真を撮ってくれば良かった。
「そういうのありだったんだ」と思った。

そんな器用な思い付きは、
昨今100均のポットが出回ってから、
忘れ去られてしまったのだと思う。

叔母は、
普通にペットボトルを再利用している人なのだ。

確かに、
昔はそうだったかもしれない。
冷やすのに入れ物がなければ、
ペットボトルを使ったりしていた。
水筒にジュースを持って行くのではなくて、
ペットボトルに飲み物を入れて、
数時間凍らせて(母が加減をみて凍らせてくれるのである)、持って行くという事もあった。

私が中学の時は、夏の部活動に行くのに、
母が家で作ったレモンジュースを、
ペットボトルに入れて持たせてくれた。
しかも、檸檬の細かいクラッシュまで、
入っていて、程よく氷っているのである。

あの頃の、温かく、スローライフな時代を、
思い出させてもらう、出来事だった。

こんな衝撃的な事に、滅多に出くわせるものではない。
若い人には「時代錯誤」と言われる人がいるかもしれない。
保冷保温のポットがあるのだから。

だけど、私は、
感動すら覚える。
涙すら出るのである。

それで、私は、その「断水用、お墓用」の
3リットルのペットボトルに、
おとしたコーヒーを、冷まして、
そろりそろりと入れてみたら、
零れもせず、ちゃんと入ったではないか!!

それで、叔母に電話して、
「3リットルのペットボトルに、
アイスコーヒーを入れたから来て」と、
呼びつけた。
叔母は、
「3リットルだなんて、何回もいれなくちゃならないんじゃないの?」と言ったので、
(そう思うのか、素直な考えだな)と思って笑うと、
「なんだ、一回か」と言った。

だけど、このペットボトル、
とても素敵だった。

「ペットボトルのイルカ」が、この事を知ったら、
嬉しがるだろうな。

「ペットボトの貸し出しコーヒー」
これなら、また貸し出せると思う。

私の家に来ても、コーヒーくらいしか、あげる物が無いのだから。

雑菌の事をいわれるかもしれませんが、
雑菌は、水道の水にも入っているのです。



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