親友ペクの声がほぼ出ない
少し光が射すとそれだけで身体がほぐれる。
ペクは、6日月曜の夜から毎日ちょこちょこと来ていた。
この時は、「風邪っぽい」という話をした。
持参した 台湾辛ラーメン と、私が作ったおにぎりを食べ、2人でファミマのピスタチオサンドクッキーを食べた。
私も台湾辛ラーメンを少し味見させて貰ったが、おつゆを一口飲み込むと「ゲホッ」と咽った。
ペクも、ときどき咽ながら食べていた。
翌日、「朝起きたら喉が痛い、リンパ腺が腫れている、首の左右の腫れ方が違う。いつもの体操も喉が痛くてだるくていけない」と言って私の家に来た。
私達は、
「台湾辛ラーメンを食べたからだ」と言い合った。
だいたいこの人は自分だけの感覚で物を推し量る事が多く、
何処かが痛いとか痒いというときは、思い込みの感覚がより激しくなる。
そのとき彼女の判断では「自分は風邪」だと言った。
「またぁ、うそばっかり、なんでもないように見える」と私は言った。彼女もなんでもないかもしれないとゲラゲラ笑っていた。
だって、「一年中どこかがおかしい」と身体の不調を訴えている。それは私以上だ。神経症だと私は言ってやる
私達の頭には「コロナ」がよぎった。
「コロナだったらどうする?」「在り得るよね」
私達の周りにも身近な若い人はいる。
若い人はコロナになっていても症状に出ない事が多いから、在り得ると私達は言い合う。
とにかく、夜中に熱が出たら、夜間の救急外来に行った方がいいという事になった。
その日の夜中は、かなり高い熱が出てしまい、夜間外来に行こうと電話したのだけれど、「今日は先生が居ないので明日来てください」と言われたそう。
「なんだって!!だったら夜間救急外来を名乗るな!!」と私は激怒した。
この時、ペクの声は、毎晩お酒と煙草を飲み過ぎて翌朝は声が潰れているバーのママみたいに、ギイギイかすれていた。
水曜の午前中、ペクはその病院に行く。
コロナの検査をしたら陰性だったと喜んでいて、デイリーヤマザキの「県北限定豆大福」を買ってやって来た。昼食も摂り、声もましになり、「今日できっと治るわ」と言って帰った。
木曜はもともとの彼女のお休みの日で、「調子はどうか」とラインで聞くと「なんだかよくない」と返って来た。
夜中にはまた高い熱が出たらしい。
一日自宅で療養して、明日からは仕事に行くと言っていたが、無理をしない方がいいと私は言った。
この人は一年に1度か2度は高熱を出す体質なのだ。本当に頑張っていっぱい働いているからだ。「そんなことないよ」と言ったって、「そんなことはある」。
そして本日金曜日。
昨夜も、高い熱が出ていたらしい。
いよいよ声はかすれすぎて、電話口でもほぼ聞こえない位に悪化している。
病院でもう一度コロナの検査をし、明日の昼に結果が出るという。
だけど、一回検査して陰性なのだから、コロナではないと思う。
「コロナだったら」
「私との濃厚接触者は大勢いる」と言う。
勿論私もだ。
喉がどれくらい腫れているか、懐中電灯を入れて見てあげたり、同じラーメンのカップでおしるを飲んだりしている。
声が出ないので私が彼女の代わりに、用足しの電話をした。
元気になって、肉肉しいハンバーガーを食べに行こう。
ごほうびトマトを買って、トマトペペロンチーノを作って食べよう。
ペグが、弱っているのがとても切ない。
こんなに切なくて寂しいものなのか、涙すら出て来るものなのかと、初めて実感した。
普段の会話で「年を取ればいつかはどちらかが先に死ぬし認知症になる」という話しを彼女がよくする。彼女は認知症の方々のヘアカットを定期的にしに行くので、身近に感じる環境があるのかもしれないが、そうなったらどれだけ切ないか、今回とてもわかった。
とにかく元気になって貰いたい。
祈るしかない。
「祈りには見返りがない」という事を、100歳の絵の先生が言っていたのを思い出す。