あじさい犬
ときどき通る道です。わざわざ通る道でもあります。この犬に会いたいから。いつもはお宅の外縁側に作られた小さな柵のお家にいるのです。外縁側ですから、サッシをからから開ければ家族の皆にいつも会える場所です。こう見えて、この犬はとても大きいです。ラブラドールレトリバーだと思います。それから歳を老っているように思えます。立つのも座るのも遅いように思います。
そんなにじっと見ていたことはありません。通る時に「あ、いたー」と挨拶をします。いつも感度の悪い携帯カメラしか持って居なかったし、この犬の柵は日陰になって暗いので撮れなかったのですが、昨日はカメラを持って出かけました。
そしたら、今日は、道の近くの大きな木に綱を掛けて貰い、こんなところに居たんです。
「あじさい犬」です。
「あ、いたのー、今日はこんなにところにいたのー、良かったねー、あじさい犬になったの、」と声を掛けると、むくっと起きてくれました。
もっと話がしたいけれど、ちょっと勇気が無い。お宅の方がいらっしゃるかもしれないし…と思って自宅を見てみると、人の気配はありません。けれども、居るか居ないかという事もわかりません。
以前、ここを通った時に、ご家族の方々が外でバーベキューをしていらっしゃったのか、外のテーブルで食事をなさっていて、この犬も外縁(ぬれえん)で一緒に交ざっていた事がありました。その時も「良かったね」と心の中で声を掛けました。
かわいくて、おおきい、表情一つ変わらない、おとなしい犬です。名前はわかりません。
帰りに通った時はこんな風に寝ていました。砂利の上が冷たくて気持ち良さそうです。そして、無防備です。車が通ろうと、私のような「おやおや」と眺める人が近づこうと、身体をぴくっぴくっと動かしながらスヤスヤ眠っていました。
私は、この犬と、もっと話がしたいんです。いつも外縁は気持ちがいいのかと聞きたいです。だいたい、そこに乗って寝ているか通りを見ているかです。
私の願いはかなうでしょうか。
午前中、こんな素敵なものが送られてきました。ジャムには違いありません。
何のジャムかわからないのです。
色はあんずか、ビワ、けれども、ビワをジャムにするのか、実際にビワジャムは見た事がないんです。それなら、あんずとレモンのブレンドだろう。どうしてこんなにとろりと出来ているのか、それはきっと裏ごししているからだ、裏ごししていてこの酸味と深みならば、私は、このジャムは……、
「シークワーサーだ」と思う。
何故ならば、これをくださった方々は世界様々な所に旅をして普通の人がなかなか食べられないであろう物を食べたり見ないであろう物を見たりしている、かなりのツワモノで目が肥えている、しかも、日本の南の島には最も精通している、以前私は、両手を広げて持つほどの大きなザルに山盛りのサーターアンダギーが乗っていてどなたかに振舞われたという写真を、見てしまったのである。
という結論に至りました。
夕方、その方のSNSを見て、驚いたのは、「梅」が庭に二つ落ちている写真だ。「ジャムづくり」と書いている。大きな梅の木が頭上にそびえているに違いなかったと、納得したのでした。