雨の朝早くすてきなものを見た

いつもより早く午前5時半に起きた。昨夜は寝苦しくてなかなか寝付けなかった。夜中も1時間ごとに目を覚ましては水を飲んだりトイレに行ったりした。蒸し暑さが消えると、私は起きだした。外の景色でもみてやろうとイタリア布のカーテンを開けた。このカーテンは20年も昔に建築コーディネーターさんに貰い、雑貨店を営んでいるときにフィッティングルーム用に私が縫ったもので現在の家の私の部屋のカーテンに丁度良い具合に吊り下がっている。

カーテンの窓向こうは雨が降っていた。4階の部屋から、あ、と思い見つけたものは、犬と飼い主の散歩だった。二人はずっと同じ方向を眺めていた。何を見ているのかはわからないが、父親の気持ちがわかる子どものようにその犬が寄り添っている。私はガラス越しに写真を撮り、うまく写っているとモニターを観た。

呆然として雨と犬と人を見つめた。
なんてすてきな朝になったのだろうと感動すらしてくる。

しばらくすると飼い主が犬の方を向いて「そろそろ行くぞ」と言い聞かせている。
綱を引っ張られながら、何かを見つけたらしく飼い主に抵抗し、余計に綱をたぐめられている。

犬は仕方なしに歩き出した。
「あれあんなところに人がいる」と4階の部屋の窓越しに私を見つけた。なんて感度のいいい犬なんだろう。見つかってしまったじゃないか。雨を選り分けてシャッターを切る音が聞こえたのだろうか。

こそこそと隠し撮りをしていたような気持ちにかられる。あんまり勝手に人の写真を撮るものではないと、すでに別の犬に吠えられている。ごめんなさい、今度は窓を開けて声を掛けるように…この時間に大声を出せるものではない、出そうものなら、隣近所の方々が火事なのか救急車なのかと起きだしてくる。だから、またシャッターの音を聞いて私を見てもらうしかない。

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